短期前払費用の活用は慎重に。重視すべきはキャッシュフローです。
決算の前に検討される節税方法に「短期前払費用」という方法があります。どんな節税方法なのでしょうか?
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短期前払費用とは?
短期前払費用を知る前に、前払費用が何かを知らないと正しい処理はできません。
前払費用
前払費用とは、一定の契約により継続的に役務(サービス)の提供を受けるために支出した費用のうち、その事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対する費用のことを言います。
継続的な役務の提供が対象であり、物品の販売や一定の時期に役務を受ける場合は対象外です。
短期前払費用
前払費用のうち、支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものは、継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入している場合は、短期前払費用として損金処理が認められます。
この処理により、通常は資産である前払費用を短期前払費用として損金処理して、節税がおこなわれるのです。
短期前払費用の注意点
「短期前払費用」を適用するにあたり、いくつかの注意点があります。
継続適用
「短期前払費用」を適用する場合は、継続して適用する必要があります。つまり、年度ごとに適用、不適用を選ぶことはできません。
支払時から1年を超える前払費用
「支払った日から1年以内」を対象としているため、たとえば、3月支払の5月~翌年4月分の前払費用は、短期前払費用の対象外です。
未払計上
「支払った日」を起点に考えるため、未払の場合、短期前払費用は認められません。
月払い契約
契約書で「月払い」が謳われている場合、まとめて「年払い」をしても短期前払費用とはなりません。
認められるもの、認められないもの
具体的に短期前払費用として認められるもの、認められないものを見てみましょう。
認められるもの
・年払の契約により年度末までに支払った翌期1年分の家賃や地代
・年払の保険契約により年度末までに支払った1年分の保険料
認められないもの
・雑誌の購読料の年払い(物品の購読のため)
・税理士報酬の年払い(継続的な役務の提供ではないため)
むすび
節税というと必ずあがる「短期前払費用」ですが、その節税効果は限定的です。
前払費用を前倒しで損金処理できた最初の年度だけは節税効果がありますが、トータルで費用処理できる金額が多くなったり、優遇されたりするわけではありません。
むしろ、「一時払い」「継続適用」が条件ですから、利用にあたっては将来的なキャッシュフローのことを踏まえて慎重に検討すべき事項だと思います。